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日頃それとなく感じている思いをそこはかとなく書きつくる雑記帳というか、駄文集というか、落書き帳というか・・・


by tsado4

(書評)  白野慎也「フィリピーナはどこに行った」

(出版社) 情報センター出版局 1600円+税 
(お薦め度)****
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芸能人ビザで来日し、2005年の法務省の方針転換で再来日がほとんど不可能になったホステスたちを追跡しその後どんな暮らしをしているのかを気軽な読み物にしている。
いかにもその軽い感じとはうらはらに、フィールドワークとして元タレント達の聞き取り調査をきっちりとこなした本である。フィリピノ語が堪能でないとなかなかできないよな。
とにかく、楽しく一気に読める。が、ありがたいことに、知らず知らずのうちにフィリピンの社会・文化に関する常識が身についてしまう。
ついついホステスと言ってしまったが、筆者の語るところによると、フィリピン的ニュアンスではGROと言わなければならないらしい。ソーリー。

フィリピン大衆文化研究家、フィリピン・カルチャー・ウォッチャーを自負している。
フィリピンの文化・社会の格好の入門書といってもいい。
フィールド・ワーカーとしてもやるべきことはやっているようだ。フィリピン社会・文化の一断生き生きと伝えている。今後、ノン・フィクション作家としても嘱望できそうだ。

大所高所から眺めるだけでは、一国の社会・文化は上っ面しかわからない。
常民を調査することで、一国の社会・文化が見えてくる。
底流に澱む普通の人達の意識と感受性に深く立ち入って表面に浮かび上がらせる作業が必要なのだ。
平凡を保護色にしてひっそりと生きている人達が、何を考え、何を感じ、いかに行動するかを掌握しなければ、社会・文化の深層の部分は理解できない。

社会の片隅に生きる、名もない一人の女性の人生を追い続けるのも、それはそれで大変な意味があるんだぜ。
偉人・賢人の人生から学べないことを学べるかもしれない。
元タレントという盛り場で働く女性達を扱っていながら、フィリピン、フィリピーナに注ぐ眼差しは温かい。共感する。

ものの見方が楽観的で偽善者っぽいなんていう人もいるだろう。
が、否定的で意地悪な眼でフィリピンを語るフィリピン通が多い中で、希望観測的に物事を見ていく態度も一つの見識だよな。少なくとも、佐太郎は、この戦列に加わって比国をウォッチしていくね。

蛇足ながら、フィリピン・ナイト・ガイドとしても役に立つぜ。
よこしまでやや向こう見ずな考えをお持ちの諸兄も、このくらいの常識は身につけておきたいものだ。ガードを固めての攻撃だわさ。

佐太郎にとって、フィリピンは何かだって?
そうさなあ、「本物のスリルと感動の味わえるディズニーランド」よ。
嘘つけ、「本物のスリルと感動の味わえる老人介護施設」だってか。
否定はしないぜ。ハハハ。
さらに付け加えると「夢と冒険と空想に満ちた宝石箱」よ。
なぬっ、グルメレポーター彦麻呂風だってか。
体型が似ているだけだっちゃ。ハハハのハ。
by tsado4 | 2007-11-25 06:50 | フィリピン関係の本の書評