日頃それとなく感じている思いをそこはかとなく書きつくる雑記帳というか、駄文集というか、落書き帳というか・・・


by tsado4

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(出版社) 女子パウロ会  1600円
(お薦め度)****  
子供、貧困、純真な魂。
禁じ手だよな。感情失禁で、涙腺が弱くなっている私は、読みながら何度泣いたことか。
東京ドームシティのカフェデンマークでよく本を読むが、その度に隣りの女性に好奇の目で見られてしまった。

このルポルタージュは、吉祥寺で始まっているが、吉祥寺は、私にとっても、東京の生活が始まったといっても良い、思い出深き街だ。
私は今でも、それまで味わったことのない、言い知れぬ寂寥感、孤独感に打ちのめされた日のことをはっきりと覚えている。4月の天気の良いうららかな春の日、その日、私は、なぜか思い出せないが、井の頭線の三鷹台駅で電車を降り、吉祥寺まで井の頭公園を歩いていた。その春、望み通りのの大学に入ることが出来たし、どちらかというと、順風の中にいた。外界の穏やかで楽しげな風景とは対照的に、心の底は充足感とは程遠い、どこか満たされぬ空虚感、何か欠けている喪失感が占有し始めていた。悩み多き青年への脱皮の瞬間だったのかも知れない。考えてみると、この歳になるまで、この心の中核にあいた穴を埋めようと、40年間、あがき続けきたのだ。必死に何かを追い求めながら、それが何かわからず、酒を飲んで馬鹿騒ぎをし、いろいろなものに手を染めてきた。もう遅いというか、やっと間に合ったというか、還暦間近になり、なんだか穴を埋められそうな気がする。

松居氏が午後3時の男なら、私はさしずめ午後7時を回ってしまった男だ。昼下がりの憂愁に思い沈む氏に対して、陽の沈んだ薄暗がりの中で、迫りくる暗黒の深淵に恐れおののく男ってところか。焚き火を囲んだ夜の宴があらんことを期待する。

書評を書かずに、己のことばかり書いているって、いいんだよ。どうせ、何を書いても、露店のサクラよろしく、「買った!」とか「いいな。それ」なんて、叫んでいる輩に見られてしまうのだから。

筆者は、確かに、子供の中にキリストを見て、子供たちから力をもらった。
子供達の一人一人が持つ、それぞれの履歴、その厳然たる事実に、圧倒されてしまう。この本で最も心を打つ部分だ。物質的に満たされた日本でのほほんと生きている者は打ちのめされてしまう。
彼が後書きで主張していることは、私が今考えていることとほとんど同じ(ちょっと、ずるいか)。ぜひともこの本を読んでもらいたい。生ビール、2、3杯を飲んだと思えば、安いもんだ。胃の中が洗われるのではなく、心の中が洗われるのを請合うよ。
筆者は、こざっぱりした身なりの初老の男たちの孤独に何度も言及している。
現実の生活に疲れ果て、人生に生き詰まりを覚え、ぼんやりと公園にたたずんでいたり、ネオン街の酒場で憂さをはらしているようなら、筆者のように、ハウスオブジョイにボランティアに行くのもいいよなあ。もっとも、子供達に魂を救済されにいくのだから、子供達の未来のために、たっぷりとお布施を持っていくのですぜい。

やっぱり一つだけは、ケチをつけておこう。最後の山行記録、あれは「サンバギータの白い花」というタイトルにつながる大切な部分とは知りつつも、入れない方がよかったよなあ。あれはあれで、魅力のある内容ではあるのだが、独立したものとして、他で発表してもらいたかった。この本の流れを損ない、盛り上がった気持ちが、冷める感じがした。
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by tsado4 | 2004-09-09 10:30 | フィリピン関係の本の書評